『空間の詩学』序章Ⅶ

◆序章Ⅶ(p032-033)
 
引用
 
「知識には同じく知識をわすれる能力がともなわなければならない。不知(ノン・サヴォワール)とは無知ではなくて、知識を克服する困難な行為である。この代償によって作品はたえず一種の純粋な開始となり、創造は自由の行使となる」(ジャン・レスキュールの言葉を引用)
 
「詩においては不知(ノン・サヴォワール)は根本条件である」
 
「作品は生のはるかうえにつきぬけ、生には作品をときあかせない」
 
「芸術はいきるようには創造しない。創造するようにいきるのだ」(ジャン・レスキュールの言葉を引用)
 
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ジャン・レスキュール (1912– 2005):フランスの詩人。引用は『ラピック』より
 
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要約
 
・この章は見開きに収まっている。詩人ジャン・レスキュールの著書『ラピック』より引用を多くとっている。ポイントは「詩においては不知は根本条件」という点だろう。→★ここで、「不知」と「無知」についての定義を明確にする必要があるが、ひとつの疑問が起こる。これまで「不知」→知らないということを知っている。「無知」→知らないことすらわかっていない、と思っていたのだが、ここでの「不知」は「知っていることをいったん忘れて知識によりかからない」という風に読めてしまう。ここもいったん保留にする。
 
・「芸術はいきるようには創造しない。創造するようにいきるのだ」、この言葉から、ここでも詩は芸術家の人生や感情で成り立つものではないとくりかえしている。創造が先だと、前章で述べた、詩的イメージがすべての始まりであることを強調している。→★好きな言葉。作品によって自分が開かれていくという経験は私にもある。